神戸大学大学院農学研究科
応用動物学講座
動物形態機能学教室

研究室について

 県立兵庫農科大学が神戸大学農学部として国立移管された2年後の1968年に家畜管理学講座が設置されました。爾来,下田與四雄先生,田場典治先生が教室をご担当され,その後,豊澤敬一郎先生(応用生理学分野),河南保幸先生(形態機能学分野)を経て現在の研究室に至っています。2007年の大学院自然科学研究科の第四次改組で農学研究科が独立したことに伴い,形態機能学教育研究分野は現在の動物分子形態学教育研究分野と組織生理学教育研究分野の2分野に分かれましたが,形態機能学教室として共に教育研究活動を行っています。2019年度以降,合併して動物形態機能学教育研究分野となる予定です。

 生物は地球という環境の中で生活しています。単細胞生物から多細胞生物への進化を遂げた生物たちが,その環境中でどのように立ち回ってきた(いる)のか,有性生殖(性分化機構)の成り立ち,非特異的・特異的生体防御システムやアポトーシスを含めた細胞の生理機能の発現,ならびに環境中の様々な要因が生態系や人間の健康へ及ぼす作用の分子基盤に関するメカニズムを解明しています。とくにエピジェネティック制御や遺伝子発現制御をもとに,個体発生・系統発生学,性分化機構,環境遺伝子毒性,生体防御機構等を中心に,『マクロ(形態)からミクロ(分子)へ,そしてミクロからマクロへ』を基本姿勢として,個体レベルから電子顕微鏡・遺伝子レベルまでの動物の体の構造と機能との関連について教育と研究を行っています。現在の主要な研究テーマは以下の通りです。

 1)環境中に放出・蓄積された残留化学物質による生態系や動物の健康への被害は遺伝子発現にも作用し,その影響は世代を越え,種の保存を脅かす地球規模での重大かつ深刻な問題となっているが,その分子基盤に関する基礎・応用研究は少なく,これらの危機に直面して解決の可能性を追求する分子毒性遺伝学的研究を行っている。

 2)雄と雌の差は何か。精巣と卵巣とは何が違うのか。生殖腺や脳に性差を与えるものは何か。生物の進化の過程で何が起こったのか,その答えを得るべく,最近の分子遺伝学的解析データ(含 エピゲノム解析)を踏まえ,性の決定と分化機構について各種遺伝子群の相互調節機構と形態形成との関連の解明を推進している。

 3)動物の消化管内では日々食餌由来の栄養素の消化・吸収が行われる。栄養素の消化・吸収には,各種消化酵素に加えて消化管各部位に定着する常在細菌が関与するが,その定着がどのように制御・維持されているのかについては不明な点が多い。そこで,消化管内における「常在細菌の定着を制御するメカニズム」の解明に向けて,抗菌物質や上皮細胞によるアポトーシスの制御など多方面から研究に取り組むとともに,消化管とは対照的に無菌状態に保たれる呼吸器内に備わる生体防御機構の解明にも着手している。